世界で通用する英語力をどのように身につけるか
Rochelle Koppさんについて

ジャパン・インターカルチュラルの代表取締役。「反省をしないアメリカ人をあつかう方法(アルク)」をはじめ、異文化コミュニケーションに関する20冊以上本を著し、日米異文化の専門家として国際的に高い評価を受ける。エール大学卒、シカゴ大学経営大学院(MBA)。

 

大塚 「数年前にロッシェルさんが書かれた『反省をしないアメリカ人をあつかう方法』を非常に楽しく読ませていただきました。あれほど良くまとまっている日米ビジネス文化比較本はありません。素晴らしい本です。」
ロッシェル 「ありがとうございます。」
大塚 「それにしてもインパクトのあるタイトルですね! ロッシェルさん自身がお考えになられたのですか?」
ロッシェル 「そうです。実は編集者が『ちょっと過激すぎるのでは?』とおっしゃったので『いいえ! これでなければダメです!!』といったんですよ (笑)。」
大塚 「名マーケッターですね (笑)。」
ロッシェル 「ありがとうございます。」
大塚 「ロッシェルさんには MANABI.st の Core Curriculum 基礎編である Doing Business with Westerners Course の教材を作っていただきました。本日は日本人ビジネスマンに求められる英語力についていろいろと聞いていきたいと思っています。」
ロッシェル 「OK!」
大塚 「まずはじめに聞きたいのがゴール設定です。私自身、カウンセリングという形で多くの MANABI.st のお客様と話す機会があるのですが、皆さん目標設定に非常に苦労されています。明確な目標がないと教える方も大変です。」
ロッシェル 「この悩みは良く聞きます。私が一番強く感じるのは日本人は実現不可能な高い目標をかかげる傾向があるということです。」
大塚 「実現不可能というと?」
ロッシェル 「例えば『映画を字幕なしで見れるようになりたい』という目標は、一見頑張れば達成出来そうですが、正直言って不可能だと思います。私自身日本語検定 1 級を 15 年以上も前に取り、日本語力にはかなり自信を持っていますが、日本映画を見る時は英語字幕をみないと 100% 理解できません。話の大筋は掴めますが細かいニュアンスとなると理解できない箇所がいくつも出てきてしまいます。」
大塚 「ロッシェルさんでも字幕が必要なのですね。」
ロッシェル 「もちろん。」
大塚 「他には?」
ロッシェル 「『難しい本を辞書なしですらすら読めるようになりたい』や『テレコン (電話会議) で話されることは一字一句理解したい』等です。」
大塚 「それは 10 年以上アメリカに住んだ私でも無理です。」
ロッシェル 「そうでしょうね。もっと Realistic なゴールを持って欲しいと思います。」
大塚 「でもこれがなかなか難しいんですよね。TOEIC の点数で会話力が測れればいいのですが、TOEIC はテクニックでカバーできるテストですので目標としては適しません。目標がなかなか定まらないのでダラダラと長い間、英会話スクールに通ってしまう方が非常に多くいらっしゃいます。私自身、目標が立てられない方にはカウンセリングで『臆せず英語で自己主張出来るようになって欲しい』といっています。本当は点数で測れるものを目標を提示したいんですけどね。。。」
ロッシェル 「Confidence Level をあげるというのはいい目標だと思います。MANABI.st の Core Curriculum を見ていると、私の作った Doing Business with Westerners で西洋的考え方を理解し、Case Discussion Course で日本人が苦手なアメリカ式 Discussion を学び、最後は Negotiation Course で現役ビジネスパーソンと真剣交渉をする。これを全て終えることが出来れば非常に高い Confidence Level を得ることが出来ると思います。」
大塚 「ありがとうございます。しかし、ロッシェルさんに作ってもらった Doing Business with Westerners コースを終了されても Case Discussion Course で挫折してしまう方が意外と多い。私自身、ビジネススクールに行っていた時、やはり一番困ったのが突然意見を求められた時にどう答えるかでした。たぶん日本語で聞かれても瞬時には答えられない。英語だとさらに緊張が入りますので、頭が真っ白になります (笑)。」
ロッシェル 「それはそうですよ。何しろ日本ではそのような教育をしていませんからね。アメリカでは小・中・高とディスカッションの授業があり、Debatable な Topic について勝手に役割を決められ、Debate する訓練を積んでいます。」
大塚 「そのような訓練を受けていない日本人は突然意見を求められた時に緊張せずきちんと意見を言えるようになる効果的なトレーニング方法を教えてください。」
ロッシェル 「月並みなアドバイスですがとにかく Practice Makes Perfect です。Force yourself to speak while you think! 日本人はまずじっくり考えてから話す癖があります。欧米人は沈黙が嫌いなので、待ちきれないんですよね。あからさまにイライラした態度を取るのでそれが変にプレッシャーを助長するんですよね。あとはうまくしゃべれなかった部分ばかり焦点をあて、悲観されている方が多い。うまくしゃべれなかった部分よりもちょっとでもうまくしゃべれた部分に焦点をあて自分を褒めるくらいのマインドセットが必要です。」
大塚 「それは良く分かります (笑)。」
ロッシェル 「だから何でもいいので Discussion するトピックを選び、失敗を恐れずどんどん話してみること。」
大塚 「日本人の多くは『質問される→答える』パターンに終始してしまいがちです。Discussion は Two way (双方向) ですので質問もしなければいけません。」
ロッシェル 「そう思います! その中でやっぱり一番いいのがプライベートでレッスンをすることだと思います。グループですと 15 分一度しか発言の機会がまわってきませんので集中力が持ちません。MANABI.st のお客様は幸せだと思いますよ。現役のビジネスパーソンと議論する機会があるのですから。。。」
大塚 「ありがとうございます! そういっていただけるとうれしいです。弊社のお客様の中にはテレコンを頻繁に行う人が大変多くいます。テレコンにおいて日本人が最も注意をするべきことを教えてください。」
ロッシェル 「とにかく欧米人はテレコンに代表される会議でいろいろなことを決めたがります。でも日本人は部署に持ち帰り、まわりと相談する時間が欲しい。それはそれでいいのですが、Yes も No も言わず一言も話さない方が多いと思います。そしてテレコンで決まったことを後になって覆すケースが多いのではないでしょうか? それでは欧米人は何の為のテレコンだったのか分からなくなり、不信感を持ってしまいます。Better to say “no” than not saying anything! どんなに欧米人に嫌われようが最後のスタンスだけははっきりと伝えておかないとコミュニケーションが成り立ちません。」
大塚 「Better to say “no” than not saying anythingですか。。。確かに仰る通りですね。これが難しいのですが。。。」
ロッシェル 「そのようですね。テレコンもいわば Discussion と同じです。Discussion には失敗なんてありません。とんちんかんなことを例え言ってしまっても Discussion を通じて解決できます。The only way to fail in a discussion is to stay quiet です!」
大塚 「いい格言ですね! 肝に銘じます。次に聞きたいのが Writing です。私はよく友人に電子メールの英訳をお願いされるのですが、これが本当に難しい。必ず最後に『今後ともよろしくお願いします』で締められている (笑)。」
ロッシェル 「それに対応する英語はありません (笑)。」
大塚 「ロッシェルさんはアルク社の『ビジネス E メール速習パックライティングエイド』という通信教育教材を監修されました。実はあの宿題は弊社の先生陣が添削しているんですよ (笑)。」
ロッシェル 「そうでした。この間言っていましたね (笑)!」
大塚 「E-Mail などのライティングに際して日本人が犯す誤りの中で一番多いのは何でしょうか?」
ロッシェル 「私がもっとも目に付くのは説明不足ですね。日本語を直接英訳してメールを書いている人が大部分かと思いますが、通常それでは説明が足りません。日本人同士であれば以心伝心でコミュニケーションできることでも欧米人には伝えたいことはきちんと相手にわかりやすいように説明しなければなりません。分かっているだろうという前提に立って省略するのはいけません。」
大塚 「そうはちょっと意外ですね。でも考えてみると確かに日本語は主語を省略することが多いと思います。それでも通じてしまうのがやはり単一民族だからなんでしょうね。Writing を向上させる為にもっとも効果的な方法を教えていただけないでしょうか?」
ロッシェル 「Practice makes perfect です! 4 年以上前に私が書いた『英語で文通 (メール) しませんか?』という本があります。ここで紹介させていただいたのは Pen Pal を探し、日常的にメールのやり取りを行うという方法です。この本の中にはどこで Pen Pal を探すことが出来るか、はじめにどのようなメールを打てばいいのか数多くの例文と共に書いてありますので是非読んでいただければ幸いです。」
大塚 「なるほど!」
ロッシェル 「それ以外でしたら興味あるトピックについて書かれたブログにコメントをいれるのもいいと思います。アメリカ人はすぐにレスを書くので面白い Discussion になるかもしれませんよ。」
大塚 「それはいいアイディアですね。でもそういうブログなんてどこへ行けば探せるのでしょうか?」
ロッシェル 「ブログ検索の大手の www.technorati.com に行けばきっと興味のあるトピックのブログを探すことが出来ると思いますよ。」
大塚 「それはいいですね。そういえばロッシェルさんは最近新たな本を出されましたね。ご紹介いただけないでしょうか?」
ロッシェル 「Thanks for asking (笑)! 今回出させていただきました本は『製造現場の英語表現』というタイトルで理系向けに工場など製造現場で起こりうる日本人と欧米人との文化の違いに焦点を当て、頻繁に起きるトラブルの具体例とそれを解決するための方法やその時に使える英語例文を約 1,000 程収録させていただきました。『反省をしないアメリカ人をあつかう方法』の製造現場版と捉えていただければ分かりやすいかもしれません。忙しいエンジニアの方々向けの本となります。」
大塚 「面白そうですね! 是非読んでみたいと思います。最後にロッシェルさんが経営する Japan Intercultural Consulting について簡単に説明していただけますか?」
ロッシェル 「弊社では日本・アメリカ・中国・ヨーロッパ・南米に支店を持ち、多くの異なる文化的背景を持った人々が集まる環境で、職場の人間関係を改善していけるようにサポート致します。日本企業向けですと赴任前研修、プレゼンテーション講座、セクハラについての講座など、各企業のニーズに即してプログラムを組んでいます。」
大塚 「とにかくロッシェルさんの日本に対する深い知識と日本語力にはいつも感心してしまいます。本日は長い間ありがとうございました! 今後ともよろしくお願いいたします。」
ロッシェル 「こちらこそ!」
(敬称略)